税理士

河野利明 講師

 

(質問)

私は、平成27年中に2年前父から相続したA土地を2,000万円で売却しました。
A土地は、評価額2,000万円で、相続税を申告納税しましたので、譲渡所得は発生しなさそうな気もします。
とはいうものの、「取得費」及び「必要経費」の計算については、非常に難解で、税額の目安がつかず、心配です。
譲渡所得計算上、差し引ける、取得費と譲渡費用について、全般的にご回答ください。

【売却した土地の概要】

A土地の売却収入

2,000万円

相続時のA土地評価額(相続税申告用に計算)

2,000万円

A土地を父が取得した価額(昭和35年)

500万円

A土地の相続登記に要した費用

20万円

取得した相続財産(土地、預貯金等)の総額

(債務控除前)

4,000万円

納付した相続税の総額

540万円

 

(回答)

結論から申しますと、以下4で述べます、「取得費の引継ぎ」の規定によって、譲渡所得税が発生することとなりますので、ご注意ください。
また、お支払いになった相続税については、「取得費加算」の特例が適用できます(以下5で詳述します)。

1 土地や建物の譲渡所得に対する所得税の課税方法

土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して、計算することになっています。

 

2 譲渡所得の計算方法

譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。

取得費に含まれる主なものは次のとおりです。

なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。また、土地や建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5を取得費(概算取得費)とすることができます。

(2) 譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、譲渡費用の主なものは次のとおりです。

① 土地や建物を売るために支払った仲介手数料

② 印紙税で売主が負担したもの

③ 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料

④ 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用

このように、譲渡費用とは売るために直接かかった費用をいいます。
したがって、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用は譲渡費用になりません。

 

3 長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分

土地や建物を売ったときの譲渡所得は、次のとおり所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の二つに区分し、税金の計算も別々に行います。
長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。

 税額=課税長期譲渡所得金額×20%(所得税15%+住民税5%)

短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。

 税額=課税短期譲渡所得金額×39%(所得税30%+住民税9%)

 

4 取得費及び取得日の「引継ぎ」(重要ポイント)

相続や贈与により取得した場合の取得費は、死亡した人や贈与した人がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。

 なお、土地建物を相続や贈与により取得した際に相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含まれます。

 また、取得の時期は、通常、売った土地建物を買い入れた日ですが、相続や贈与で取得したときは、死亡した人や贈与した人の取得の時期がそのまま取得した人に引き継がれます。

 したがって、死亡した人や贈与した人が取得した時から、相続や贈与で取得した人が譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期か短期かを判定することになります。

(実例)

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5 相続税が取得費に加算される特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)

1) 特例の概要

 この特例は、相続により取得した土地、建物、株式などを、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというものです。

(2) 取得費に加算する相続税額

<算式>

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6 A土地に関する具体的な取得費の計算

また、取得日は昭和35年となりますので、所有期間5年超で、長期譲渡所得の税率が適用されます。

 (2) A土地の相続登記費用20万円は、取得費に加算されます(4の(実例)参照)。

 (3) 5で示しました、相続税の取得費加算の特例により、以下の金額が取得費に加算されます。

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(4) A土地の取得費

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税理士

河野 宝 講師

 

Q JAが顧客に受取書を交付する次のような場合は、印紙の要否について迷うのですが、課税判定と判定の理由を説明してください。

  1. 出資組合員以外のAから、普通貯金へ入金のため現金4万円、普通貯金通帳1冊と入金申込書(4万円)を受領し、受取書を交付する場合(文例Ⅰ
  2. 出資組合員以外のBから、出資組合員Cの分も含めて、現金10万円、普通貯金通帳2冊、入金申込書2枚(B3万円、C7万円)を受領し、受取書をBに交付する場合(文例Ⅱ
  3. 出資組合員以外のDから、普通貯金への入金および定期積金の新規取組のため、現金8万円、普通貯金通帳1冊、入金申込書(3万円)、定期積金口座開設申込書(5万円)を受領し、受取書を交付する場合(文例Ⅲ

 

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A&解説

印紙税の課税対象となる受取書は、金銭又は有価証券の受取事実を証明する受取書(第17号文書)です。ただし、記載された受取金額が5万円未満の受取書と営業に関しない受取書は、第17号文書の非課税物件欄の規定により非課税です。

農協等が受取書を出資組合員(以下「出資者」)という。)に交付する場合、営業に関しない受取書として非課税になります。

しかし、出資者以外の者に交付する受取書は営業に関する受取書として第17号文書に該当し、記載金額5万円以上のものは課税されます。

顧客が農協等に交付する受取書も含めて、この取扱いをJAについて示します。

 

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第17号文書は、売上代金に係る受取書(第17号の1文書で階級定額税率適用)と売上代金以外に係る受取書(第17号の2文書で定額税率適用)に分かれ、記載金額5万円未満の非課税文書に該当するかどうかは、両方の合計金額で判定します。両方に該当する場合、売上代金に係る金額のみをその受取書(第17号の1文書)の記載金額として判定します。

次に、受取書に次の①、②の事項を記載したときは、第17号文書ではなく、第⒕号文書(金銭又は有価証券の寄託に関する契約書)として判定され、出資者か否かを問わず、また記載金額に関わらず、印紙(200円)貼付を要します。

①貯金入金として現金を受領した際に受託文言、口座番号または預入期間等寄託契約の成立に結びつく事項

②貯金の継続または振替のために預る場合で、継続後または振替後の貯金について種類、種別、期間など具体的事項

 

以上に基づき、設例の印紙税を課税判定すると次のとおりです。

(1)文例Ⅰ「現金」の合計金額に4万円と記入されており、備考欄に受領原因として普

通貯金と示されていますので、その限りでは、売上代金以外の受取書として第17号の2文書に該当します。

しかし、さらに「申込書等」の合計金額にも4万円と記入されていることから、金銭を保管目的で預ったとみられるため、金銭又は有価証券の寄託に関する契約の成立を証明するための第⒕号文書(印紙税額200円)に該当すると指摘される可能性があります。

この場合、「申込書等」の合計金額を記入することは第⒕号文書の重要事項にあたるため、第⒕号文書と判定されるわけですが、合計金額欄に記入しなければ第⒕号文書と指摘されるおそれはありません。

(2)文例Ⅱ 受取書「現金」の合計金額欄に10万円と記入されており、備考欄に受領

原因として普通貯金と示されていますので、第17号の2文書に該当します。

出資者C分7万円を含んでいますが、出資者以外のBあてに交付した受取書であり、5万円以上であることから、印紙200円の貼付が必要です。

出資者以外のBあて記載金額3万円の受取書(5万円未満で非課税)と出資者Cあて記載金額7万円の受取書(営業に関しないものとして非課税)に分ければ、両方とも非課税です。

(3)文例Ⅲ 定期積金に係る受取書は課税しない取扱(不課税)ですが、普通貯金への入金分と一緒に預かり、合計金額で記入した場合には第17号の2文書に該当し、出資者以外あてであることから印紙200円の貼付が必要です。

なお、普通貯金と定期積金の内訳を記載したとしても、定期積金分を除外せず合計金額で判定を行い、第17号の2文書として指摘される可能性があります。ただし、記載合計金額が5万円未満の場合は、非課税です。

普通貯金受入分3万円の受取書(非課税)と定期積金取組分5万円の受取書(不課税)とに受取書を分ければ、どちらも課税になりません。

税理士

河野利明 講師

 

【質問】

祖父母から孫に、結婚や子育てに使う資金を贈与しても、一定金額以内であれば、贈与税がかからない制度が創設されたと聞きました。

教育資金についても同様の制度があると思いますが、制度の内容と活用法について、詳しく教えてください。

 

【回答】

1 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の内容

平成27年度税制改正により、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が創設されました。

適用時期は、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの贈与です。

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2 一括贈与時に非課税の適用を受けるための申告手続

 「結婚・子育て資金の非課税の特例」の適用を受けるためには、その適用を受けようとする受贈者が、結婚・子育て資金非課税申告書を、その結婚・子育て資金非課税申告書に記載した取扱金融機関の営業所等を経由して、信託がされる日、預金若しくは貯金の預入をする日又は有価証券を購入する日までに、その受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

  また、結婚・子育て資金非課税申告書が取扱金融機関の営業所に受理された場合には、その受理された日にその受贈者の納税地の所轄税務署長に提出されたものとみなされます。

  なお、預入等期限までに結婚・子育て資金非課税申告書の提出がない場合には、「結婚・子育て資金の非課税の特例」の適用を受けることはできません。

 

3 結婚・子育て資金の払出及び結婚・子育て資金の支払

 「結婚・子育て資金の非課税の特例」の適用を受ける受贈者は、結婚・子育て資金の支払に充てた金銭に係る領収書その他の書類又は記録でその支払の事実を証するもの(「領収書等」といいます。)を、受贈者が選択した方法ごとに定められた次の(1)又は(2)の提出期限までに、取扱金融機関の営業所等に提出しなければなりません。

(1)  結婚・子育て資金を支払った後にその実際に支払った金額を結婚・子育て資金管理契約に係る口座から払い出す方法(のみ)をその口座からの払出方法として選択した場合

 ⇒ 領収書等に記載された支払年月日から1年を経過する日

(2) (1)以外の方法を結婚・子育て資金管理契約に係る口座の払出方法として選択した場合

 ⇒ 領収書等に記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日

 

4 「一括贈与」の実務的な意味

まず初めに確認しておかなければならないことがあります。

元来贈与税の制度において、祖父母等の直系尊属が孫などの直系卑属に教育資金や生活費を贈与しても、非課税です。俗に、「都度渡し」と言われています。

 民法(877条)上の扶養義務者(直系血族と兄弟姉妹)間における、生活費または教育費のための贈与については,それが通常の社会常識の範囲で行われている限り,贈与税はかかりません。

  ここで、生活費とは,その人の社会的,経済的地位等を考えて,通常の日常生活を営むのに必要な費用をいい,治療費・養育費等も含みます。

決して生活上最低限の費用ではなく、その人ごとの日常的な生活費ですから、就学等のために家から離れて暮らす場合の住居費や旅行費用、家族等の会食に要する費用や結婚式の費用など、多岐にわたります。

また,教育費とは,義務教育費に限らず,被扶養者の教育上,通常必要と認められる学費,教材費,文具費等をいいます。大学、大学院への進学や、留学など、広範囲にわたります。

それでは、近年創設された、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」(平成27年4月1日から平成31年3月31日まで)と、「教育資金一括贈与の非課税措置」(平成25年4月1日から平成31年3月31日まで)のポイントは何なのでしょうか?

それは、「一括贈与」ということです。

 今支出する費用を、その都度贈与するのではなく、将来にわたる「結婚・子育て資金」や「教育費」を、今のうちに、まとめて渡しておくので、そこから自由に使いなさいということです。

 

5 結婚・子育て資金の贈与は、相続対策として活用できるのか

1で述べましたように、贈与者の死亡の場合、「結婚・子育て資金」の残額には、贈与者(被相続人)の相続財産に加算して、相続税の計算をしなくてはなりません。

 これに対して、贈与者の死亡時における「教育資金」の残額は、相続財産に加算されることはありません。

したがって、大変失礼な言い方になりますが、直系尊属がお亡くなりになられた後使うための教育資金を、今のうちに一括贈与すれば、相続財産から切り離され、受贈者が30歳になるまでに使い切れば、贈与税も課税されないため、結局相続税も贈与税も課税されないことになります。

一方、結婚・子育て資金は、直系尊属がご存命中に使うための資金は贈与税がかかりませんが、亡くなられた後で使うもの、つまり贈与者が死亡したときの残額は、相続税がかかるということです。

この「相続財産への持ち戻し」があることで、結婚・子育て資金の贈与に関しては、相続税の節税効果(相続財産を減少させる相続税対策)は限定的と考えられます。

したがって、富裕層と言われている高齢の世代から、贈与等を活用して、子供や孫に資産を移す事によって消費を刺激する狙いから贈与税の非課税制度等がこれまで以上に拡充されている昨今、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」制度は、若年層への預貯金移転による経済効果に重心を置いた制度といえましょう。

「その都度渡すのが煩雑なので、一度に渡しておく」というイメージです。

税理士

清田幸弘 講師

 

Q 私は個人でアパート、駐車場などを所有しており、不動産賃貸業を営んでいます。賃貸しているアパートの修繕等に備えて建物更生共済に入っていましたが、この度、その建更が満期になりました。この税務上の取り扱いを教えて下さい。

 

A 個人事業者の方が個人事業者契約の満期共済金を受け取った場合、その収入は満期支払日(満期日の翌日)の属する年の一時所得として扱われます。

 

<解説>

建更共済等に加入して満期を迎えると満期共済金がもらえます。個人事業者の方が個人事業者契約の満期共済金を受け取った場合、その収入は満期支払日(満期日の翌日)の属する年の「一時所得」となります。(「不動産所得」や「事業所得」の収入金額とはなりません。)

建物更生共済の掛金は、「必要経費」への算入が認められている部分と「積立掛金」部分とに分かれており、事業用の建物更生共済が満期を迎えた場合には、満期共済金相当額から「積立掛金」を控除した金額がその事業年度の所得または損失になります。

 

(1)一時所得の計算の仕方

  一時所得とは、一時金として受ける収入のうち、営利目的の継続的行為から生じたものや労務や役務の対価、資産の譲渡等による対価として受け取ったものではない、臨時・偶発的な性質の所得をいいます。

  一時所得の計算方法を算式で表すと下記のようになります。

収入金額 - 収入を得るために支出した費用 - 特別控除(最高50万円) = 一時所得の金額

こうして求めた一時所得の1/2に相当する金額を他の所得と合算して総所得を求め、確定申告時に納める税金を計算します。(ただし、源泉分離課税されるものを除きます。)また、一時所得の計算上生じた損失は他の所得と損益通算して相殺することができません。

 

(2)共済掛金の取り扱い

  事業用建更の掛金については、火災や自然災害等が生じた場合の損害補償に充てられる掛け捨て部分(必要経費として毎年の事業所得・不動産所得の経費となる部分)と建物の更新等に充てるための積立として満期共済金の支払いに充てられる部分(積立掛金部分として満期・解約の時点で一時所得の経費となる部分)とに分かれます。

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 一時所得の計算の際には、満期共済金相当額から「今までに支払った掛け金の全て」を控除してはいけません。不動産所得で必要経費として算入していた部分を二重に計上することになってしまいますので、そのようなことがないようにご注意下さい。

  今回のご質問の場合には、受け取った満期共済金から既に払い込んだ掛け金のうち、積立掛金部分を差し引き、さらに一時所得の特別控除50万円を差し引いた金額が、一時所得の金額となります。

 

【設例】

  満期共済金2,800,000円の支払いを受け、積立掛金に相当する部分の累計額が2,270,000円である場合(割戻金は掛金と相殺)

  2,800,000円 - 2,270,000円 - 500,000円(特別控除)= 30,000円(一時所得)

  一時所得は所得金額を1/2にし、他の所得金額と合算して税額を計算します。そのため、この設例の場合には30,000円×1/2=15,000円が課税の対象となり、確定申告の際にはこの15,000円に他の所得を合算して税金を求めます。

 

(3)特殊なケース

①1つの建物を、事業用部分と居住用部分とで兼用している場合

各用途の専用割合に応じて按分計算します。事業用部分にあたるものに関しては、上で述べたとおり処理します。また、居住用部分の満期共済金についても一時所得として取り扱いますが、居住用部分に対応する共済掛金に関しては、旧長期損害保険料控除または地震保険料控除にあてはまる場合は、所得税については最高50,000円、住民税については最高25,000円が所得から控除されます。

 

②事業用建更を解約した場合

満期共済金を受け取った場合と同じ考え方で処理します。具体的には、その建更の解約返戻金相当額から資産計上している共済掛金積立相当額を控除した金額がその年の所得(損失)として取り扱われます。

 

税理士

河野利明 講師

 

【質問】

 法人が支出する飲食費については、社外の参加者の有無や、3,000円、5000円といった一人当たりの支出金額によって、処理が変わってくると聞いています。

近年の税制改正もあって、税務処理が複雑化しているため、社内での経理処理や、営業現場等へ経費精算内規を浸透させるのになかなか苦労しているところです。

飲食費の法人税法上の取扱について、整理をお願いいたします。

 

【回答】

1 交際費の損金不算入

租税特別措置法61条の4では、交際費について以下の通り規定されています。

「法人が平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度において(租税特別措置法は、時限的措置ですが、本規定は、細かな改正を繰り返しながら、長年にわたり延長されています)支出する交際費等の額のうち「接待飲食費」の額の100分の50に相当する金額を超える部分の金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」

また、資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるものについては、年800万円(「定額控除限度額」)を超える部分の金額が損金不算入とされます。

 「損金に算入できる額はいくらか?」という角度から規定を読み解くと、以下の通りとなります。

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2 「損金算入に制限のある交際費等」とは

法人税法上損金算入制限がある、「交際費等」の定義は、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者(従業員や役員も含まれる)等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(「接待等」)のために支出するもの」であって、次の(1)から(5)を除くとされています。

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3 「飲食接待費」(=「飲食費」)とは

「接待飲食費」とは、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(もっぱら当該法人の法役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)であって、帳簿等に以下の記録を記載することを要件とされています。

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つまり、記録保存が損金算入の要件となるのです。

 

4 「会議費」とは

「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」であって、以下のものが含まれます。

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交際費の損金算入規制が強化された、1980年代前半頃から、会議費について、「1人3000円以下の飲食」という形式基準が良く知られています。

しかし、3000円という金額は、法人税法関連法規のどこにも存在しません。かつて、国税局の調査等で、1人3000円以下の飲食で、会議が伴うと判断されるものは、原則として是認するとの内部指針があったとされており、それが全国的に流布したものと言われています。

したがって、会議費についての金額的基準は、あくまでも、「通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない」というのが明文化された指針です。

近時の改正で、1人当たり5000円を超える場合であっても、会議を伴っていて、通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えないものであれば損金算入されることが、通達上明確化されました。(注1)

また、古い時代の通達では、「飲酒を伴わない」との規定があったのですが、その部分は削除された経緯があります。

実務感覚としては、ビール等若干の飲酒を伴うことは妨げないが、居酒屋やバーでの酒食や、いわゆる「打ち上げ」等親交を深める目的の飲食については、会議費とはならないと解されます。

 

5 飲食費の取扱についての整理

(1) 交際費に含まれる飲食費ついての法人税法上の取扱いについて整理しますと、以下の3タイプがあることが分かります。

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(注2)特定のメンバーに偏った場合など、給与課税(源泉所得税)が生じる可能性があります。

次に、会議費含まれる飲食費の法人税法上の処理についてまとめてみます。

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