余裕金運用にかかるリスク管理指導実践研修(A班)
2025年7月22日(火)~23日(水)の2日間、集合形式で開催しました。各県域から21名の受講者が参加しました。
研修のねらいとして、JAの有価証券運用が拡大、JAにおける適切なリスク管理の実践がより一層重要な局面となっている中、JAが法令・自主ルール等の順守のもと、適切なリスク管理を行い経営の健全性を確保していくために、県域によるJAに対する指導・管理の強化が求められています。本研修ではJAの余裕金運用・リスク管理の指導業務を担当する職員を対象にレクチャーによる知識の習得、ケーススタディーによる県域実務者間のディスカッション、交流等を通じ知見の向上をはかることを目的としています。

受講者が品川研修センターに参集、グループディスカッション等を実施している風景
- ■JAの有価証券運用が実態として拡大している中、JAにおける適切なリスク管理の着実な実践がより一層重要な局面となっている。
- ■JAが法令・自主ルール等のもと、適切にリスク管理しつつ有価証券運用を行う態勢を構築していくためには、県域によるJAの実態に応じた対話・指導が重要。
- ■本研修は、県域の指導職員が有価証券運用およびリスク管理の実践的な知識を得るため、ケーススタディや意見交換を通じ、実践力の習得や他県との情報連携強化(横のつながり醸成)を企図した研修プログラムとなっている。

研修は集合形式で品川研修センターで行われました。「余裕金運用にかかるリスク管理指導」を所管する農林中央金庫 JA バンク統括部と連携して開催しました。研修 2 日間の実施内容や様子は以下の通りです。
1日目は、現在の金融機関の規制や業務フローは“古い事件”が契機となっていることや、組織や役職員のために ALM 委員会があることなどが冒頭講義で紹介され、引き続き足元の系統の状況、ALM 委員会の手引き(全面改訂版)の趣旨・ガイダンスが実施されました。
その後グループディスカッションとして各県域取組状況や課題・悩みなどをグループ替えを挟み2回に分け受講生同士で共有・発表、各県の課題が共通していることを確認したり、また取組みが進んでいる県域から多くのヒントを得ていました。
2回のグループディスカッション後、JA バンク統括部による有価証券運用・リスク管理の基本事項や系統 BIS システムの活用方法などの講義が行われ、県域の JA 指導担当職員の期待役割・ミッションなどが共有化され、初日が終了しました。
2日目は、実際に JA の ALM 委員会で想定されそうな具体的な題材を用い、午前午後を通して3回に渡るグループディスカッションを実施しました。(題材ごとにメンバーを入れ替えて実施)
各題材ごとに、①事例の良い点・悪い点の抽出、②どうあるべきだったか、③どうアクションすべきだったかの論点について受講者間で様々な角度から意見出しがなされ、各グループからの発表後、JA バンク統括部から各題材毎に重要事項の解説や、大きなリスクを取ろうとしている際は「この先どうなるのか想像力を働かせた助言」「第三者の立場からの目線の重要性」などのメッセージが発信されました。グループディスカッションで頭が温まっている受講生からは「解説内容がスムーズに入ってきた」との声もありました。
グループディスカッション後、JA バンク統括部から「信用事業に限らず全体の資金繰り」「JA 財務体力を踏まえたダメージコントロール」などの補足コメントがなされました。
研修全体として合間に講義はあるものの、主にグループディスカッションが中心の研修で終始受講者間の活発な討議で盛り上がり、またグループメンバーの頻繁な入れ替えで幅広い意見交換が行われました。研修最後には各受講者から今回の研修を通しての学び・気づきや今後どのように行動していくのか等を発表してもらい終了しました。
研修カリキュラム

受講者の声
- ◆講義とディスカッションのバランスがよく、とてもわかりやすい研修で理解が深まった
- ◆指導業務と運用自体を経験している他県の方の話を聞けるのが何よりよかった、参考になる部分が多く有意義であった
- ◆ALM委員会などで具体的に求められていることが学べたし、多くの事例も知ることができてよかった
- ◆講義の質・アウトプット・インプットの比率や、タイミング、時間配分などが適切かつ参加者の方々もハイレベルで議論しやすかった
- ◆今後もJAのALM委員会に積極的に関与していきたい
担当講師の声
農林中央金庫JAバンク統括部
山田 勝己 講師

長いゼロ金利時代から「金利ある局面」となり、JA の ALM 運営はとても重要になりました。JA 信用事業の主戦場は「地元のお金を集め、まずは地元に還流させる」金融仲介業務であり、有価証券投資はあくまで余裕金運用です。この順番は重要です。
一方で、お預かりした JA 貯金に利息をつけてお返しするために、また JA 経営を維持し組合員や地域へのサービスを継続するためには、集まった資金をしっかり効率運用し収益を得ていく必要があります。
そのため、JA は有価証券投資を増やしつつあり、金融環境が大きく変化する中で数々のリスク・留意点が増えています。この研修は JA の ALM 運営、有価証券運用/リスク管理の実効性を高めていただくための指導を担う県連(信連/農中支店)の担当者向けに立ち上げました。
農林中央金庫JA バンク統括部のメンバーによる座学的なコマも設けましたが、全国各県の指導担当者が出会い、議論し、研修後もネットワークが出来るような機会にしたいと考え、グループディスカッションを多く採り入れました。少しでも多くの気づきや今後の JA 指導のヒント、情報交換先を得ていただけたら、と願っています。