窓口・渉外お役立ちコラム
おさえておきたい、相続税の納税額を大きく左右する 「小規模宅地の評価減」の特例!!
税理士 河野 利明 講師
2018.07.02
1 どういう土地が減額の対象になるか?
相続した土地等(土地と借地権を指します)のうち、被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族の事業用(貸付事業用を含む)または居住用だったものが対象です。
生前、個人商店や個人事務所などを行っていた家屋の敷地や、住んでいた家屋の敷地について、相続税の評価額を大幅に引き下げられる特例です。
減額幅や限度面積のポイントは、以下のとおりです。 なお、贈与により取得したケースは、この特例の適用を受けることはできません。あくまで相続です。
2 減額される割合等
相続開始の直前における 宅地等の利用区分 |
土地等の利用状況 | 限度 面積 |
減額される 割合 |
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被相続人の事業の用に供されていた宅地等 | 貸付事業以外の事業用の宅地等 | ① | 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
被相続人の貸付事業用の宅地等 | ② | 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% | |
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 | ③ | 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
(注1) 「貸付事業」とは、「不動産貸付業」、「駐車場業」、「自転車駐車場業」及び事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行う「準事業」をいいます。
(注2) 複数の土地を有している場合、たとえばA土地は特定事業用(上表①)B土地は貸付事業用(②)C土地は特定居住用(③)といったケースがおこりえます。この場合、少々複雑な考え方をとるのですが、以下とおり、限度面積を判定します。
重複適用の可能な宅地等の区分 | 限度面積 |
特定事業用と特定居住用を併用する場合 (貸付事業用はないケース) |
「完全併用」つまり、それぞれ限度面積まで減額可能。 特定事業用≦400㎡ かつ 特定居住用,≦330㎡ 両方ある場合最大限度面積730㎡になります。 |
特定事業用、特定居住用の他に貸付事業用を併用する場合 | (特定事業用×200/400+特定居住用×200/330+貸付事業用)≦200㎡ |
3 事業用、居住用それぞれの適用要件のまとめ
(1) 特定事業用宅地等
区分 | 特例の適用要件 | |
被相続人の事業の用に 供されていた宅地等 |
事業承継要件 | その宅地等の上で営まれていた 被相続人の事業を相続税の申告期限までに 引き継ぎ、かつ、その申告期限まで その事業を営んでいること。 |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで 有していること。 |
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被相続人と生計を一にしていた 被相続人の親族の事業の用に供されていた宅地等 |
事業継続要件 | 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、 その宅地等の上で事業を営んでいること。 |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。 |
(2) 特定居住用宅地等
区分 | 特例の適用要件 | ||
取得者 | 取得者等ごとの要件 | ||
被相続人の居住の用に供されていた宅地等 | 被相続人の配偶者 | 「取得者ごとの要件」はありません。 配偶者であれば無条件で適用可能といえます。 |
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被相続人と同居していた親族 | 相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人 | ||
被相続人と同居していない親族 | 同居していない親族であっても以下の要件を満たすと適用可能です(要件はかなり厳しいです)。 (1)相続開始日から遡って3年以内に次の人が所有する家に住んだことがないこと(つまり持ち家がないこと) ①自己またはその配偶者 ②3親等内の親族 ③特別の関係にある法人(同族会社) (2) 被相続人の死亡当時に自分が住んでいる家が、過去一度も被相続人の所有でなかったこと (3)被相続人に配偶者または同居している他の相続人がいないこと (4)その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
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被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等 | 被相続人の配偶者 | 「取得者ごとの要件」はありません。 | |
被相続人と生計を一にしていた親族 | 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人 |
(注) 平成26年1月1日相続開始以後、次の場合は、特定居住用宅地等に該当するものとして取扱うこととされました(要件の緩和措置です)。
①二世帯住宅で構造上分かれていても(例えば入り口が別)、同一生計として取り扱うことができます。
【注意】 「区分所有建物登記」がされている建物は適用対象となりません。
②老人ホームなどに入居または入所していた場合、入居前の住居は、相続開始時点で被相続人の「居住の用に供されていた」ものとして取り扱うことができます。
【要件】 相続開始時点で要介護認定または要支援認定を受けていた被相続人が次の住居又は施設に入居または入所していたこと
B 介護老人保健施設
C サービス付き高齢者向け住宅
(3) 貸付事業用宅地等
区分 | 特例の適用要件 | |
被相続人の貸付事業の用に 供されていた宅地等 |
事業承継要件 | その宅地等に係る被相続人の 貸付事業を相続税の申告期限までに 引き継ぎ、かつ、その申告期限まで その貸付事業を行っていること。 |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の 申告期限まで有していること。 |
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被相続人と生計を一に していた被相続人の 親族の貸付事業の用に 供されていた宅地等 |
事業継続要件 | 相続開始の直前から相続税の 申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を 行っていること。 |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の 申告期限まで有していること。 |
以上