窓口・渉外お役立ちコラム

医療費控除の29年から実施された新しい税制 「セルフメディケーション税制」 (薬局で購入した医薬品の医療費控除の特例)

2017.12.29

1 セルフメディケーションってなに?

 セルフメディケーションとは、「自己服薬」の意味で、医師から処方される医療用医薬品に替えて、自分自身で医療用から転用された市販の医薬品(スイッチOTC医薬品)を、薬局やドラッグストアで買って、健康の維持増進や疾病の予防の取組を行うことをいいます。
 セルフメディケーション税制対象医薬品には、アレグラFX、アンメルツNEO、エアーサロンパスDX、エスタックイブ顆粒、ガスター10、新コンタックかぜ総合、ナロンエース、ニコレット、パブロンS小児液、ベンザブロックIP、ムヒアルファEX、龍角散せき止め錠、ロキソニンSなど、耳慣れた市販薬が列挙されていて、その数は1,600品目以上に上ります。

2 セルフメディケーション税制とは?

 個人が、平成 29 年1月1日から平成 33 年 12 月 31 日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払ったその対価の額の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(その金額が8万8千円を超える場合には、8万8千円)について、医療費控除の対象とすることができます。
 一般の医療費控除の場合は、支払額が10万円を超えてはじめて控除できることがよく知られています。これに対して、セルフメディケーション税制の場合は、医療費控除のハードルが、10万円から1万2千円に大幅に引き下げられることを意味しています。
 ただし、スイッチOTC医薬品の購入費として、セルフメディケーション税制の医療費控除ができる金額は、年間10万円が上限で、したがって、最大控除額は、「10万円-1万2千円=8万8千円」となります。

【セルフメディケーション税制と一般の医療費控除の比較】

セルフメディケーション税制 一般の医療費控除
対象となる医療費の範囲 一定のスイッチOTC購入の対価 医師や歯科医師の診療治療の対価
治療・療養のための医薬品の購入(スイッチOTC該当薬品も当然含まれる)
控除対象支出最低額 1万2千円 10万円
控除対象額 8万8千円 200万円
適用対象者 健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人 基本的にすべての納税者(居住者)
適用 選択適用(併用できない)

3 セルフメディケーション税制と一般の医療費控除のどちらを選ぶと有利か?

 セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、従来の医療費控除との選択適用となります。
 したがって、年間の医療費支出総額(スイッチOTC薬の購入価額を含む)とスイッチOTC薬単体での支出額が、それぞれいくらかによって、いずれか有利な制度(控除額が多くなる方)を選択することになります。

以下、3つのケースを検討してみたいと思います。

【ケース①】 1年間の医療費の支出総額10万円、内スイッチOTC薬の購入価額9万円のケース

100,000円
一般の医療費等 一般の医療費控除額 0円
90,000円
セルフメディケーション税制の控除額 78,000円
12,000円

《判定》 セルフメディケーション税制のみ選択可能、控除額78,000円

セルフメディケーション税制による医療費控除額 78,000円、一般の医療費控除額 0円 となり、セルフメディケーション税制のみが医療費控除可能です。

【ケース②】  1年間の医療費の支出総額15万円、内スイッチOTC薬の購入価額9万円のケース

150,000円
一般の医療費等 一般の医療費控除額  50,000円
100,000円
90,000円
セルフメディケーション税制の控除額 78,000円
12,000円

《判定》 セルフメディケーション税制選択、控除額78,000円

セルフメディケーション税制による医療費控除額 78,000円、一般の医療費控除額 50,000円
となり、78,000円>50,000円
よって、セルフメディケーション税制が有利になります。

【ケース③】  1年間の医療費の支出総額18万円、内スイッチOTC薬の購入価額9万円のケース

180,000円
一般の医療費等 一般の医療費控除額
80,000円
100,000円
90,000円
セルフメディケーション税制の
控除額 78,000円
12,000円

《判定》 一般の医療費控除を選択、医療費控除額80,000円

セルフメディケーション税制による医療費控除額 78,000円、一般の医療費控除額 80,000円
となり、78,000円<80,000円
よって、一般の医療費控除のほうが有利になります。

4 セルフメディケーション税制の適用を受けるための要件

(1) 適用を受けるための、「一定の取組」とは?

 セルフメディケーション税制は、その適用を受けようとする年分に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っている居住者が対象となります。具体的には、次の取組が、「一定の取組」に該当します。

保険者(健康保険組合、市町村国保等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】

※ 確定申告する方が任意に受診した健康診査(全額自己負担)は、「一定の取組」に含まれません(厚生労働省ホームページセルフメディケーション税制に関する Q&A Q8)。
市町村が健康増進事業として行う健康診査【生活保護受給者等を対象とする健康診査】
予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
市町村が健康増進事業として実施するがん検診

  なお、申告される方と生計を一にする配偶者その他の親族が「一定の取組」を行っていることは、要件とされていません。
 つまり、納税者本人が取組を行っていれば、生計を一にする親族のために購入したスイッチOTC薬の購入価額は、その親族が「一定の取り組み」を行っていなくても、セルフメディケーション税制医療費控除の対象になるということです。
購入した薬を誰が服用したかを特定することは不可能であることによる、一種の割り切りと考えられます。