窓口・渉外お役立ちコラム

預貯金口座付番制度の開始にあたっての注意点

2017.12.01

1 マイナンバー制度の背景、社会的な役割

 マイナンバー(個人番号)は、社会保障、税、災害対策の3分野で、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されます。
 マイナンバーのメリットは、主につぎのような点です。
①行政事務を効率化し、人や財源を国民サービスに振り向けられる
②社会保障・税に関する行政の手続で添付書類が削減されること、「マイナポータル」を通じたお知らせサービスを受け取ることができること、各種行政手続がオンラインでできることなど、国民の利便性が向上する
③所得をこれまでより正確に把握することで、きめ細やかな社会保障制度を設計し、公平・公正な社会を実現する

2 預貯金口座付番制度の開始とその目的

(1) 預貯金口座付番制度の開始

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下、「マイナンバー法」という)および国税通則法等の改正法が平成30年1月1日に施行され、同日以降、預貯金口座にマイナンバーおよび法人番号が付番されることになります。

(2) 預貯金口座付番制度の目的

 マイナンバー等の預貯金口座への付番については、社会保障制度の所得・資産要件を適正に執行する観点や、適正・公平な税務執行の観点等から、金融機関の預貯金口座をマイナンバーと紐付け、金融機関に対する社会保障の資力調査や税務調査の際にマイナンバーを利用して照会できるようにすることにより、現行法で認められている資力調査や税務調査の実効性を高めるものです。
 また、預金保険法または農水産業協同組合貯金保険法の規定に基づき、預貯金口座の名寄せ事務にも、マイナンバーを利用できるようにするものです。

3 預貯金口座付番制度における金融機関の義務と貯金者の立場

(1)預貯金者等情報(注)の管理義務

 JA等の金融機関は、平成30年1月1日以降、預貯金者等情報を当該貯金者等のマイナンバーまたは法人番号により検索することができる状態で管理することが義務付けられます(改正国税通則法第74条の13の2、マイナンバー法9条)。
 (注)預貯金者等の氏名(法人については、名称)および住所または居所その他貯金等の内容に関する事項であって財務省令で定めるものをいう。

(2)マイナンバーの取得と利用目的の通知等

 JA等の金融機関は、新規口座の開設等に際しては、本制度により強制されるものではありませんが、貯金者にマイナンバーまたは法人番号の告知を求めることになります。ただし、マイナンバーは個人情報ですから、その取得に際しては、個人情報保護法に従って「預貯金口座付番に関する事務」という利用目的を本人に通知しまたは公表する必要があり、投資信託の特定口座等に伴って個人番号の告知をすでに受けている顧客については、「金融商品取引に関する法定調書作成事務」等の利用目的に、「預貯金口座付番に関する事務」を追加する変更を通知・公表する必要があります。なお、これら通知・公表は、施行日の半年程度前には行うべきものとされています。
 マイナンバーの取得方法として、たとえば、個人番号届出書等の帳票を作成する等により、貯金者から個人番号の告知を求めることになります。

(3)貯金者には告知義務がない

 貯金者には、個人番号を告知する義務はなく任意となっているため、告知を強制することはできない点に注意が必要です。
 ただし、付番開始後3年を目途に、預貯金口座に対する付番状況等を踏まえて、必要と認められるときは、預貯金口座への付番促進のための所要の措置を講じる旨の見直し規定が設けられています。したがって、平成34年までには貯金者の告知義務が定められる可能性があります。

4 マイナンバー提供依頼の際の注意点

 貯金者にとって、マイナンバーの告知は義務ではありません。しかしながら、JA等の金融機関は、預貯金者等情報を当該貯金者等のマイナンバーまたは法人番号により検索することができる状態で管理することが義務付けられるので、新規口座の開設の場合だけでなく、既存の顧客についても、マイナンバーを任意に提供していただくよう協力を求めます。
 マイナンバーの提供依頼に際しては、前述の預貯金口座付番制度の目的を説明するとともに、貯金口座にマイナンバーが付番されるか否かを問わず、貯金口座は税務調査の対象になっていることなど、お客様にとって付番による不利益は何らないことや、政府が個人のどのような情報を保有し、どのようにやり取りしているのかを監視するシステムが導入されている「マイナポータル」の機能を説明することも有効と考えられます。
 任意の告知が得られない場合は、再度の告知を求める可能性があることを顧客に説明し、引き続き任意の提供を求める取組みが必要です。