窓口・渉外お役立ちコラム

年金受取口座指定の推進手法と留意点

2017.09.01

 年金受取口座指定は、JAにおいて推進すべき重点項目のひとつです。年金制度の正しい知識をもち、お客様にとって有用な情報を提供できなければ、獲得も難しいものになります。お客様の側に立って、地域の顔でもあるJAならではの推進活動を行っていきましょう。

1 受取口座指定につながる知識・情報

 JAに年金受取口座を指定していただくためには、まず、お客様が喜ばれる情報・知識を伝えなければなりません。それは、将来の年金額を少しでも増額するために、今からどうやって効率よく年金を増やすことができるかです。そのために必要な知識・情報は以下のとおりです。

① 基礎年金に対して2分の1の国庫負担が恒久的に行われる 

 20歳以上60歳未満の自営業者の方などは、国民年金に加入し、原則としてその保険料を納付する義務があります。将来、国民年金から老齢基礎年金が受給できるようになったときの支払原資は、「納付された保険料(1/2)+国庫負担(1/2)」です。つまり、国が半分保険料を支払ってくれる制度なので、非常にお得といえます。

② 国民年金第1号被保険者の保険料支払には、割引制度がある

 国民年金の保険料は、納付期限前に納付することができる前納(口座振替・クレジットカード払い・現金払)や早割といった制度があり、これを利用すると保険料が割引されます。このなかで割引率が高いのが前納(口座振替)で、平成29年度は、1年払で4,150円、2年払で15,640円も割引されます。

③ 国民年金第1号被保険者は、付加保険料を納付することができる

 国民年金の保険料を全額(月額16,490円)納付する場合、付加保険料(月額400円)も納付すれば、老齢基礎年金に「付加保険料納付月数×200円」が上乗せされます。なお、65歳未満の人が国民年金に任意加入する場合も、付加保険料を納付することができます。また、老齢基礎年金を繰下げ受給した場合、付加年金は増額されます。

④ 夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年未満であれば、20年になるまで厚生年金保険に加入する

 夫がサラリーマンで妻が専業主婦やパートタイマーという家庭を考えた場合、夫が受給する老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算されるケースが多いです。この配偶者加給年金額は、年齢により257,400円~389,800円(平成29年度価格。特別加算を含む)となります。
 配偶者加給年金額が加算されるためにはいくつかの要件がありますが、その1つに夫の厚生年金保険の被保険者期間が原則20年以上というものがあります。つまり、勤続20年未満での退職を考えた場合、20年までは勤続したほうが年金額の面では有利なので、考慮する必要があります。

⑤ 65歳から支給される老齢基礎年金が満額(779,300円)でない場合は、任意加入ができる

 65歳から満額の老齢基礎年金が受給できない場合、厚生年金保険に加入していなければ、60歳から65歳になるまで国民年金に任意加入ができます。任意加入し保険料を納付することにより、将来の年金額を増やすことができます。

2 指定推進の具体的なセールス話法

具体的に以下のようなセールス話法を実践してみましょう。
①「お客様、国民年金の保険料はきちんと納付しなければなりません。国民年金は、国が保険料を半分負担してくれる有利な制度です。」
②「国民年金の保険料を納付する場合には、割引制度があります。JAに口座を開設していただき口座振替で前納しますと、年払いで4,150円、2年払いで15,640円も割引されます。年払いや2年払いをする場合は、2月までに市区町村に申し込む必要がありますが、まとまったお金が必要となりますので、それまでに定期積金等で準備されたらいかがでしょうか?」
③「国民年金保険料の全額を納付しますと、月々400円の付加保険料を納付できます。付加保険料を納付し、65歳から老齢基礎年金を受給したとすると、毎年、老齢基礎年金に加算して「付加保険料支払月数×200円」が受給できます。つまり、納付した付加保険料は2年間で元が取れます。」
④「ご主人様は、現在、厚生年金保険の被保険者期間が20年未満ですが、65歳までに20年以上になれば、奥様が65歳になるまで「加給年金」が支給されます。それまではしっかりとお勤めされることをお勧めします。また、奥様が65歳になった場合には、この加給年金は支給停止となりますが、今度は、奥様の老齢基礎年金に「振替加算」が支給されます。振替加算は、奥様に終身で支給されます。」
⑤「奥様の65歳から受給できる老齢基礎年金は、満額である779,300円ではありませんので、60歳から65歳まで国民年金に「任意加入」して、これを増額することができます。前納で年払いや2年払いの割引制度も利用できますので、是非、JAに口座開設されて、口座振替の手続を行われたらいかがでしょうか?」

3 推進の際に注意すべき点

 年金推進においては、「年金って保険料を納付しても受給できる額が少ないので納付したくない」というお客様もいますが、上記の点を踏まえ、年金のメリットを伝えていきましょう。
 付加保険料は、お客様にとっては大変お得な情報ですが、厚生年金保険の加入者や保険料を免除されている人等については、納付することができません。
 また、お客様の年金情報を確認するためには、夫婦の「ねんきん定期便」が必要です。これを見ながら、夫婦の年金額や一人になった場合の年金額を簡潔に提示し、アドバイスすることで、初めて「年金受取口座指定」が可能となるのです。