窓口・渉外お役立ちコラム

待ち時間の長さに対する不満

長塚 孝子講師

2017.03.01

 待ち時間はクレームの代表例です。では、職員側としての受け止め方はどうでしょう。提携銀行の充実やコンビニATMの普及等に伴い、以前よりロビーでお待ちのお客さまもだいぶ少なくなりました。月末や年金支給などの特定日以外は、ほとんどお待たせしていない気もします。それなのになぜ、待ち時間への不満は減らないのでしょうか。
 クレームは「自分の想定を超えて、物事が悪かった時」に起こります。店頭が混んでいた時代、お客さまは「これだけ混んでいるから多少待つのもしょうがないか」と感じていました。「待ち時間」も想定内だったわけです。でも、店頭が空いている今の状況であれば「手続きもすぐに終わるはず」だと思います。結果、少しの待ち時間でも「なぜこんなに時間がかかるんだ!」と不満になります。クレームは「あと何分待てば呼ばれるのか」という情報が、お客さまにうまく伝わっていないことによって生じるのです。

ケース1.「手続きがいつまでたっても終わらずに待たされる」

 定期貯金の書替や通帳紛失など事務手続きに時間が必要な場合、目安の待ち時間を伝えることはもちろんですが、さらに時間がかかりそうな場合や、イライラした様子が見受けられたら、途中での声かけ(中間報告)を忘れてはいけません。その際は「もう少々お待ちください」だけではなく、お客さまの心情に配慮して一言を添えましょう。
 忙しそうな人には「お急ぎですよね。なるべく早くやりますね」。通帳の紛失の人には「ご心配でしょうが、すぐに手続きいたします」などです。この一言はお客さまへの「共感」を表す言葉です。
 「急いでいるのをわかってくれている」「心配だったけど、もう大丈夫だ」とお客さまは感じます。「自分を理解してくれている」と思えば、お客さまの不安も払拭され、こちらの味方になります。味方のお客さまは手続きに多少時間がかかっても、「自分のために間違いなくやってくれている」と好意的に解釈してくれます。共感の言葉を使って、まずはお客さまを味方につけましょう。

ケース2.「後から来た人のほうが先に終わって帰った」

 お客さまの心理としては、理由もなく待ちたくないし、不平等な待ち時間は長く感じます。よって、受付と返却の順番が逆になると、自分の手続きが後回しにされているのではないか、「中で何をしているのかわからない」という不安や不満の思いが、さらに待ち時間を長く感じさせてしまいます。実際には、後まわしにしているのではなく、通帳が繰越しになって後方で処理をしていてもです。特に、後方や出納で処理するものなどに関しては、お客さまからみると「窓口の人、受け付けただけで何もせず、次の人と楽しそうにおしゃべりをしているようだけど…」と感じてしまい、クレームになることがあります。これをなくすためには、事務の流れとお待ちいただく理由を最初に説明することです。例えば、「後方でお金を数えさせていただきますが、いま、前のお客さまの処理をしておりまして、それが終わってからになるので、お返しの順番が前後します。恐れ入りますが、何分ほど…」です。この一言でお客さまも「待つこと」を想定できるので、クレームを防ぐことができます。また、事務処理後の検印を待っていて時間がかかってしまうことはないですか。窓口だけではなく、後方や役職者も含めて、今優先する手続きは何か、職員間でのお客さまの情報を共有して対応することも大切です。

ケース3.「クレームをなくす環境作り」

 ロビーに「お手続きの内容により、順番が前後する場合がございます」と貼ってあるだけでも、クレームが減ることがあります。クレームをなくす環境作りができるのです。
 これはよく耳にしますが、「複数の窓口があるのに、1つの窓口が空いていなくて、さらにお昼休みの交代だと受付する人も減ってしまう」という話です。職員からみれば「しょうがない状況」でも、お客さまからみれば「仕事をしていると昼休みにしか行けないのに、なぜ窓口が閉まってるの? すぐ後ろに座ってる誰かが出てくれば、私の用件はすぐに済むんじゃないの?」としか感じられません。これをなくすために、使わない窓口はしっかり閉めておきましょう。
 また、お客さまは各係の職員の仕事を知りませんから、後方職員が窓口に出ないで無視しているように見えるのです。事務作業に追われていても、「目線を合わせる」「次にお受けするのでお待ちください」と声をかけるなど、「あなたが待っているのをちゃんと知っていますよ、終わり次第お受けします」のメッセージを、いろいろな手段を使って出しましょう。お客さまがお待ちの場合、後方担当者や役職者が前へ出て、受付や用件をお伺いするだけでもお客さまの不満は解消されます。役職者の気配りや他の職員のチームワークが生かされます。
 「利用者は顔見知りばかりで、仮に待たせたとしてもムッとするだけで、クレームにはならない」という見方があります。表面化しなくても、潜在的に待ち時間のクレームはあるということ、お客さまと職員間の待ち時間に対する情報にギャップがあり、それを埋める一言を伝えることを認識して対応しましょう。