窓口・渉外お役立ちコラム

相続税がかからない財産や 相続税の申告上差し引くことのできる債務をご存知ですか?

税理士 河野利明 講師

2016.12.20

 平成27年1月1日以降に発生した相続から相続税が増税になったことは、マスコミ等を賑わせていますので、広く周知されているところです。
相続税を申告するうえでだれでも無条件で差し引くことができる、いわゆる「基礎控除」が60%に大幅縮減されました。
このことは、相続人3人のケースでいいますと、相続税がかからない財産が8,000万円から4,800万円に圧縮されたことを意味しており、相続税の申告・納税を必要とするケースが大幅に増加したのです。

 相続が発生しますと、被相続人(死亡した方)が持っていたすべての財産を相続人等が取得します。このことは、誰しも目が行くのですが、財産を取得する一方で、マイナスの財産、つまり債務もまたすべて相続人に引き継がれることになります。
 こうした債務は、一定の要件を満たすものについて、相続税を申告する際に、「債務控除」としてプラスの財産から差し引かれます。

 また、相続財産の中には、相続税がかからない財産(「非課税財産」)もあります。
 ある財産が非課税になったり相続税の申告上差し引けることは、納税者にとって有利になるわけですから、相続税増税時代の今、これら「債務控除」や「非課税財産」について熟知しておくことが非常に重要です。

 以下、概要をまとめてみることにします。

1 非課税財産

(1)墓所、霊廟及び祭具並びにこれらに準ずるもの
「これらに準ずるもの」とは、神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものをいいますが、商品,骨董品又は投資の対象として所有するもの(つまり、美術品年鑑に載るようなものとか、貴金属製のものなど)は含まれない取り扱いになっています。
(2)被相続人が掛け金を負担していた死亡共済金・保険金等の一部

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

複数の相続人が死亡共済金・保険金等を取得した場合は、上記の非課税限度額を、それぞれの相続人が取得した額に応じて比例的に配分することになります。
 そして、とても重要な点として、この非課税枠を使えるのは「法定相続人」に限定されるということです。相続人とならない孫や兄弟などの親族等が取得した共済金等は、「相続税の申告対象にはなるが非課税の規定は適用外となる」ことにくれぐれも留意してください。
(3) 被相続人の勤務先から支給された死亡退職手当金等の一部

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

 取り扱いの細目は、上述の(2)と同様です。

2 債務控除

 相続税の課税対象となる金額を計算するうえで、マイナスの財産として「債務控除」の対象となるものは,被相続人の債務で、相続の際に現に存するもの(公租公課を含む。)であり、かつ、確実と認められるものです。
 債務が確実であるかどうかについては,必ずしも書面の証拠があることを必要としません。
 留意点として、以下の2点を述べたいと思います。

① 団体信用生命保険・共済に加入している住宅ローン等の借入金は、被相続人が死亡した時点では借入金という債務が現に存在するのですが、この借入金は、金融機関に支払われる生命保険金・共済金と相殺されますので、相続税申告に際しては、被相続人の死亡時点において相殺されたものとみなして、借入金も保険金・共済金もいずれも存在しなかったものとして取り扱います。
② 債務の中で、「公租公課」については、納期限を過ぎて滞納になっているものを想像しがちですが、実は、被相続人が納税義務者である税金であって、死亡時点で納期限が到来していないものが多いことに留意したいです。
 たとえば、住民税は、その年の1月1日の住民に対して前年分の所得をもとに課されるものですが、納期限は6月以降に到来しますので、死亡時点で納期限が来ていないものが多々あると考えられます。
 また、固定資産税は、1月1日の土地・建物の所有者に対して課税されますが、納期限は4月以降ですので、住民税と同様に、納期限が来ていないものがあるかどうか納税通知書を見てよく確認してみる必要があります。

3 葬式費用

 また、相続税計算上債務等として控除される葬式費用の額は、次に掲げる金額の範囲のものです。

  • ① 葬式又は葬送に要した費用
  • ② 葬式の際に施与した金品で、被相続人の職業、財産その他よりみて相当程度と認められるものに要した費用
  • ③ ①又は②に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
  • ④ 死体の捜索又は死体、遺骨の運搬のための費用
    •  この葬式費用の支払資金の出所については、特別の制限はなく、被相続人から相続等により取得した財産に限らず、例えば、相続人の固有の財産あるいはその葬式に際して香典等としていただいた金品等のいずれからの支払いであっても差し支えありません。
       なお、香典返戻費用(香典返し)、墓碑、墓地の買入れ又は借入れの費用、法会に要する費用、医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用は、葬式費用として取り扱わないこととされています。

       通夜や葬儀の際に、会葬に参列されたお礼として手渡す金品は、ここでいう「香典返戻費用」ではなく通常葬祭に要する費用ですから、葬式費用に含まれます。
       また、葬祭に際して菩提寺や教会等に支払った金銭やお心づけとして手伝いの方などに渡した金銭については、領収書等がないことが想定されますが、葬儀費用に該当しますので、ノート等に記録(支払日、支払金額、支払相手など)を残しておくことが肝要です。