社会保険労務士

笹沼 和子

 

1.年金額は対前年比0.9%引き上げられる

 毎年4月からの年金額は、前年1月から12月までの生鮮食品を含む全国消費者物価

指数により決められます。全国消費者物価指数は毎年1月最終金曜日に官報に公示され、

1月30日に発表された指数は、消費増税の影響もあり対前年比で2.7%上昇しました。

 実は、平成16年改正で年金額改定には、もうひとつの指標を使用することが決めら

れています。「名目手取り賃金変動率」といい、こちらは年2.3%の上昇で、物価上昇よ

り若干低いものでした。

 現行の年金改定ルールは、以下の3つの考え方で決めることとされています。

 ① 新規裁定者は賃金変動、既裁定者は物価変動をベースに改定

 ② 物価変動が賃金変動より高い場合は、既裁定者も賃金変動ベースを基準に改定

 ③ 改定率がマイナスになる場合は、新規裁定者、既裁定者とも物価変動マイナス

分を下限に改定

 よって、平成27年の本来水準の年金額は、給付と負担の公平性から現役世代の賃金変

動率にあわせることとしました。

 ただし、現在は本来の年金額より高い特例水準で支払われており、今年度はこの状態を

解消する最終年度で、すでに年0.5%の引き下げが決められています。特例水準の完全解

消に伴い、マクロ経済スライドの発動条件が整いました。平成27年度のスライド調整率

は0.9%の引き下げとなります。

 このため、平成27年度の年金額は、「賃金変動率2.3%-特例水準0.5%-スライド調整率0.9%=0.9%の引き上げ」と決まりました。したがって、物価スライド率より低い改定となります。

 年金は後払いです。お客さまが改定後の減額された年金を手にするのは4月15日の定

時払いではありません。改定後の4月分と5月分が支給されるのは6月15日の定時払い

からです。

 なお、毎年6月上旬に年1回の「年金振込通知書」が青い圧着式のハガキで送付されま

すが、年金額が改定される際は「年金額改定通知書」が同じハガキに印刷されています。

 「基礎年金番号と年金コード」が記載されていますので、6月は年金推進にとって要の

月となります。

 平成27年度の年金額は以下のとおりです。

            26年4月  27年4月

 

老齢基礎年金  772,800  780,100

              (64,400) (65,008)

障害基礎年金  966,000  975,100

      (1級)      (80,500) (81,258)

障害基礎年金  772,800  780,100

    (2級)       (64,400) (65,008)

遺族基礎年金  995,200  1,004,600

    (子1人)      (82,933) (83,716)

    (基本額)    772,800   780,100

    (加算額)    222,400   224,500

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (注1)金額単位は円

 (注2)(   )金額は月額金額

 

2.国民年金保険料は月340円アップに

 平成27年度の国民年金保険料は月15,590円、平成28年度は月16,260円です。(平成26年度は15,250円)

国民年金保険料を納付書で納付のお客さまには4月中旬に納付書が送付されます。窓口に納付書で国民年金保険料を納めにきたお客さまにはJAの口座振替をおすすめしましょう。納付書から口座振替には2か月程度時間を要します。

 平成26年度から2年前納が開始されました。年4%程度の利回りを得ることができますが、2年前納は口座振替のみとなり、毎年2月末までに申し込む必要があります。

 プラスワンセールスとして、次年度の国民年金保険料の2年前納に向けての定期積金、および受給時の年金額が有利になる月400円の付加保険料セットをお知らせし、頼りになるJAを目指しましょう。

 

 

社会保険労務士

笹沼 和子

1.なぜ2月が大切な月なのか

 20歳以上60歳未満の人は国民年金に強制加入です。

 ただし、国民年金の第2号被保険者であるJA職員や会社で働く人、公務員・私立学校省職員は、毎月の給料から厚生年金・共済年金保険料に含まれて天引きされていますし、いわゆるサラリーマンの妻である第3号被保険者は、厚生・共済年金制度全体で負担していますから自身での納付はありません。

 国民年金保険料を個別に納付しているのは、第1号被保険者である専業農家の組合員や自営業の人となります。

 今回は、JAの窓口に納付書で国民年金保険料を納付されているお客さまに対するアドバイスについての再確認です。このようなお客さまがいらっしゃったら、ぜひお得で便利な口座振替による納付と前納(まとめ払い)をすすめましょう。

 年末年始にかけて、日本年金機構から文書が送付されました。国民年金保険料を口座からまとめて引落すことに変更を促す内容です。納付書から口座引落への変更、または口座引落でも例えば1年前納から2年前納への変更等は、変更希望月の2か月前に申し出る必要があります。2月松までに申し出れば、4月末の前納引落に間に合うのです。

 特に納付書に接する機会の多い窓口担当者が中心となる年金アプローチといえます。やがて、この口座が年金受取り口座となる可能性もあります。

 年金相談会では、JAの最大のライバルであるゆうちょ銀行が支店長自らが窓口で国民年金保険料の口座振替についてアドバイスしているとのお客さまの声がありますから、JAも油断はできません。

2.お客さまにとってのメリット

 保険料を納付書で納付している第1号被保険者の人へのアドバイスとして、以下の4点が考えられます。

(1)便利な口座振替に変更

(2)お得な前納(まとめ払い)に変更

(3)定期積金で次年度の納付に備えさせる

(4)より有利な付加保険料のセット

 国民年金保険料は、平成26年度が15,290円ですが、現時点において平成28年度はまだ公表されておりません。

 実は、平成26年度から口座振替のみ2年前納が始まりました。1年前納の場合は約2%の年利回りに対し、2年前納は約年4%の利回り効果を得ることができます。

 しかし、当初はこの場合の社会保険料控除は2年まとめて行うとされており、そのことがネックとなり様子見の人が多かったのですが、その後、希望により、当年の4月から12月分、翌年の1月から12月分翌々年の1月から3月分と3年分割での社会保険料控除も可能になりました。年金は年度、税金は年による違いからズレが生じるのです。

 平成20年度からJAカードをはじめとするクレジットカード払いも可能となっています。ただし、カード会社のポイントが付与されるため、現金支払の割引が適用されます。

 さらに、月400円の付加保険料をセットしますと、200円×付加保険料納付月数分の付加年金が終身加算されます。付加年金は自身が納付した分は2年でモトが取れます。

 付加保険料は、年金事務所や市区町村役場の国民年金課に「年金手帳」と「認印」を持参して申し込みをします。申し込み時点からさかのぼって納付することはできません。第1号被保険者と65歳までの任意加入者が納付できます。免除や猶予をしている人は付加保険料のみを納付することはできません。

 農業者年金加入者は付加保険料が強制的にセットされています。

 逆に国民年金基金加入者は、付加保険料に該当する分は国民年金基金に納付するため、付加保険料のセットはできません。

 

社会保険労務士

笹沼 和子

1.注意しなければならない年金予約推進

 平成27年の幕開けです。今年は厚生年金の男性の新規の年金推進対象者に空白はありませんが、実は来年、平成28年度には、再度年金新規受給の「空白の1年」がやってきます。

 平成27年になったばかりで、来年のことなんて「まだまだ先のこと」と思いがちですが、各金融機関における年金の予約推進対象年齢がどんどん引き下げられている今、注意しなければならないことがあります。

 それは、「男性の厚生年金支給開始がいつまでも61歳ではない」という点です。

 「なんだそんなことわかっているよ」と思う方こそ要注意です。頭でわかっていても、ついうっかり言葉では「61歳から」と出てきてしまうことがあるためです。年金推進に慣れている方こそ、基本に立ち返って、「厚生年金支給開始一覧表」とともにお客さまの年金手続き時期を確認することを心がけましょう。なぜなら、年金手続きがいつから可能かは、お客さまにとってはもちろん、JAの予約から今後の手続きまでの管理をすることにとっても重要だからです。支給開始年齢を間違えるということは、お客さまの信頼を失うことにつながりかねません。

 なぜ今年の年金推進に神経を使わなければならないのか。それは支給開始年齢が変わる節目だからです。

 年金推進にとっていつも大切な節目年齢は「60歳」です。サラリーマンは定年を迎える年ですし、自営業であれば国民年金保険料納付が終了となる年齢です。人生においても還暦であり、生まれ干支の年になります。

 ただし、誰もが年金受給手続きに入る時期かというとそうではありません。

 年金請求時期は、その人の加入歴に応じてひとりひとり異なります。今年のルールを再確認します。今年は60歳(昭和30年生まれ)、61歳(昭和29年生まれ)、65歳(昭和25年生まれ)が年金請求時期の対象者です。

 年金の受給資格のある人で、

(1)厚生年金の女性(昭和30年生まれ)

  60歳が年金請求時期です。

  60歳3か月前に、日本年金機構から緑のA4封筒に入った年金請求書が送付されます。誕生日の前

 日から受付可能です。

(2)厚生年金の男性

 ① 昭和30年4月1日以前生まれまで

   61歳3か月前に上記年金請求書が送付されます。

 ② 昭和30年4月2日以降生まれから昭和32年4月1日生まれまで

   厚生年金請求時期が62歳からとなります。今年4月に60歳を迎える男性に対する年金推進には注

  意しましょう。

(3)共済年金・農林年金の男女

   厚生年金男性と同じ支給開始年齢です。受給できる1~2か月前に年金請求書が送付されます。本

  年10月に共済年金が厚生年金に統合されますが、その後に受給権が発生する場合でもこの支給開始

  年齢は変更されません。

(4)国民年金の男女(昭和25年生まれ)

   繰上げ請求していなければ、65歳が年金請求時期です。65歳3か月前に年金請求書が送付されま

  す。なお、希望により66歳から70歳まで時期を遅らせて増額させる繰上げ請求も可能です。

2.上記年齢迎えるお客さまには声掛けを

 年金推進のコツは「難しく考えないこと」です。お客さまの請求手続時期は、お客さまの年金加入歴がわからなければ把握できません。過去の加入歴を聞かなければわからないこともあります。

 「男性だから61歳で声を掛ければよい」と思っていると、退職金推進につなげることができませんし、60歳で繰上げ請求しているケースもあります。JA全体でしっかりと声を掛けて年金推進に取り組みましょう。

 

 

 

 

 

社会保険労務士

笹沼 和子

1.なぜ遺族年金の取り組みが重要なのか

 JAで年金口座拡大を目指し、約20年が経過しました。取組当初は組合員が専業農家で、国民年金のみの受給が大半を占めていました。

 ただし、国民年金受給者が死亡しても、未支給年金は発生するものの遺族年金は発生しませんので、口座は解約となり、年金口座は減少となります。そのため、遺族年金が注目されることはありませんでした。

 しかし、就業構造の変化により兼業農家が増えたこと、および地域住民に利用をPRすることで員外利用が増加したため、JAでの厚生年金受給者が増加し、むしろ国民年金のみの受給者が減少しています。

 重要なのは、厚生年金受給者が死亡した場合、「遺族年金」が発生する可能性が高いという点です。遺族年金がJAに指定されれば口座は解約とならず取り引きは継続できます。

 そして、もうひとつ忘れてはならないのが、老齢厚生年金に「空白の1年」が生じるようになったことです。

 昨年昭和28年4月2日生まれの男性が60歳になったことにより、厚生年金支給開始が60歳から61歳となるはじめての年代に突入しました。そのため、平成25年度下期から今年度上半期は新規年金請求件数が減少しました。今後、老齢厚生年金は2年ごとに空白の1年が生じることとなります。

 これに反して、遺族年金は新規受給者が毎年増加しています。そのため、どの金融機関も注目しはじめています。

 金融機関が遺族年金に注目する理由は次の5点です。

 (1) 口座解約防止

 (2) 相続による大口の預貯金解約防止

 (3) 公共料金等によるメインバンク化

 (4) 他行の預貯金、保険一時金の集約化

 (5) 新たな信頼関係の構築

2.複数受給者の死亡の注意点

 先に述べたとおり、20年以上前から年金推進に取り組むことにより、JAにおいては旧法の受給者が多いです。

 ここで、旧法の受給者を確認しましょう。「大正15年4月1日以前生まれ」ですから、今年89歳以上の人です。

 元専業農家の正組合員で旧法のお客様は、「旧国民年金」と「農業者年金」の2つの年金を受給していることが多いです。

 仮に出稼ぎや戦争中、民間の軍需工場で働いていれば、「旧厚生年金」が追加となりますから、旧法の場合、農家正組合員でも、1人で2つから3つの年金を受給しています。

 ただし、この中で遺族厚生年金に変わるのは「旧厚生年金」のみです。残念ながら、やはり死亡により年金口座は減少します。

 新法の受給者は、「大正15年4月2日以降生まれ」で、今年88歳以下の人です。新法のお客様は「新国民・厚生年金」の口座を分けることはできません。

 新法で複数の年金を受給している人の代表例は元JA職員、つまり先輩方です。

 元JA職員で農林年金が厚生年金に統合する前(平成14年3月まで)に受給権が発生した人、「昭和17年4月1日以前生まれ」の農林年金受給者は、①「特例老齢農林年金」、②「退職共済年金(振込は旧厚生年金扱いで年金コード『1170』)」と③「老齢基礎年金(振込は新国民年金扱いで年金コード『1150』)」と、1人で3つの年金口座を持っていますが、この中で遺族厚生年金に変わるのは「退職共済年金」のみです。やはり年金口座は減少します。

 しかし、発想を変えてみると、遺族年金に取り組まなければ年金口座は0になってしまうのです。ですから、まずはJAでの年金受給者が死亡した場合の未支給年金から取り組んでみましょう。そして「遺族年金」につながれば、JAから年金口座が消えることはなくなり、お客様からも感謝されます。

 早速、JA全体で取り組んでみましょう。

 

 

 

社会保険労務士

    笹沼 和子

 

 

1.平成27年10月1日に統合予定

 「被用者年金」とは、民間会社の人が加入する厚生年金と公務員や私立学校職員の加入する共済年金を指し、現時点では別箇に管理する制度となっています。

 平成27年10月1日以降新たに発生する共済年金は、「被用者年金一元化法」に基づき厚生年金として支給されることとなります。

 現在共済年金と厚生年金の制度上の違いは様々ありますが、統合後は基本的に厚生年金と同様の支給となります。ただし、支給開始年齢の引き上げスケジュールは、あと少しで完了することから、男女とも厚生年金の男子と同じままとなり、女子であっても、JR,JT,NTT,農林共済が統合したときのように厚生年金女子の支給開始年齢には合わせないとしています。

 また、統合後も、保険料徴収や年金支給、年金請求手続きは統合前と変わらず、当面は各共済組合が行う予定です。

2.統合後の職域加算について

 共済年金独自支給の「職域加算」は統合時に廃止されますが、統合前の額はこれまでどおり終身年金として支給される予定です。

 平成9年4月に統合したJR、JTは統合後受給権が発生する人の職域加算が一切なく、NTTのみ基金を創設し移管されて支給しています。平成14年4月に統合した農林年金は、平成14年3月までの期間の職域加算を「特例農林年金」として支給していますが、一時金支給の選択も可能としています。

 今回、最後の共済年金の統合については、職域加算に代わる新たな「退職等年金給付」を創設するとしています。

 予定としては、「退職等年金給付」に対する保険料は厚生年金の保険料とは別に徴収し、「退職等年金給付」の支給の半額は終身年金、残りの半額は有期年金として支給します。支給開始年齢は65歳ですが、60歳から繰上げ支給も可能とします。有期年金は10年または20年支給から選択でき、一時金の選択も可能です。本人死亡の場合、終身年金は終了となり遺族年金はありませんが、有期年金は残余分があれば、遺族に一時金として支給されるとしています。

3.その他の制度上の違いについて

(1)国家・地方公務員共済の被保険者は年齢制限がありません。統合後は、厚生年金、共済年金と同じ70歳までの加入となります。

(2)統合前は「厚生年金10年+共済年金10年」では支給されなかった加給年金が、統合後受給権が発生する場合は支給されるようになります。逆に夫婦とも厚生年金が20年になることにより、加給年金や振替年金が支給されなくなることもあります。

(3)65歳からの受取口座数は、共済年金と老齢基礎年金の2口座から、老齢厚生年金と老齢基礎年金で1口座となり、口座を分けることはできなくなります。

(4)共済年金受給者が60歳以降厚生年金に加入した場合の在職中の支給停止の基準額は、65歳以降の在職老齢年金の基準額の「46万円」が有利でしたが、厚生年金同様の「28万円」となります。

(5)障害共済年金は保険料納付要件がありませんでしたが、統合後は厚生年金同様、初診日の前々月までの保険料納付済期間と保険料免除期間が原則3分の2以上必要となります。

(6)障害のある子および孫の遺族厚生年金の受給権は20歳までとなります。

(7)平成27年9月までに遺族共済年金の受給権のある次順位者についても、平成27年10月以降に先順位者が死亡した場合は転給されません。

(8)55歳未満の父、父母、祖父母は遺族厚生年金の受給権者になれません。

 現時点において公表されている点をまとめてみました。今後の報道に注目しましょう。